初めての人のためのLISP[増補改訂版] (ISBN:4798119415)

まさかとも言える、この本の復活を目の当たりにして、ここ数年の関数型プログラミング言語ブームの影響って本当に大きかったんだなあ、と再認識。今をときめくTwitterの開発言語として、Scalaが使われたりしていますしね(以前ErlangベースのIMサーバを使っているという話もありました。今も使っているのかどうかは恥ずかしながら未チェックです)。関数型言語のクリティカル・マスまで、案外近い所に来ているのかもしれません。
私が「初めての人のためのLISP」初版と出会ったのは大学3年の頃。大学の授業(人工知能、と名前はついていましたが、基本的にLISPの授業でした)で出たLISPの課題を解くために、夏休みに一生懸命計算機センターに通って勉強してました。でも全然分からないんですよ。今思えば、その問題の難易度もおかしかったと思うんですがね。とにかく難しかった。しょうがないので、大学にあるLISPの教科書、参考書を読みあさろうとしたのですが、どれもこれも読みにくい事この上なくて・・・。説明はしかめつらしいのに、本質がどうも伝わってこない(欧米の大学とはこの辺りが決定的に違うんだなあ、とこの時思った次第です。少なくとも本気で勉強しようと思った時に、それに応えてくれる教科書/参考書がたくさんあるし、学習をサポートする仕組みもちゃんとあるという話なので)。
で、出会ったのが、薄暗い大学図書館にあるプログラミング関連の本棚でカバーも取れてボロボロになっていたこの本でした。私が見つけた時には既に発行から10年以上が経過していて、本全体全体から何とも言えない80年代臭がしていたのを覚えています。
内容は、見た目以上に80年代風のベタベタなギャグ満載。こんなはっちゃけた技術書は多分他に無いんじゃないか、という位のねじの外れっぷりです。あまりの奇天烈さに度肝を抜かれました。でも、奇妙な分かりやすさがある本でもあり、一気に読んだ事を覚えています。カッコのお化けともいうべきLISPは、いったいどういうプログラミング言語なのか。それを実感を伴って学ぶことが出来ました。今思うと斜め読みだったのかな、とも思いますが、すごくいい本でした。おかげさまで課題もどうにかこうにか体裁を整えて出し、無事単位を取る事もできたので、かなり感謝してます。
でも、当時から見て、流行から完全に取り残された感のあったLISPを扱っている事から、大学を出た今、この本をもう二度と読む事は無いんだろうなあ、と思っていたら、まさかの復活。本屋で見つけた時には、開いた口がふさがらなくなりそうになりました。関数型言語がブームとはいえ、まさかよりによってこの本が復活するとは・・・と。びっくりすると同時に、ちょっとホロリと来ました。
この本を読んでも技術者のキャリアには何のプラスにもならないと思いますが(話のネタにはなるとしても)、教養を深める、という意味ではなかなかよく出来ている本だと思います。何より読みやすいですし。いろんな要素がごっちゃに詰め込まれた本で、まさに帯に書いてある通りの「天下の奇書」だと思います。とりあえず技術者なら(技術者でなくても?)一度手に取ってみる事をお勧めします。