デカルトの密室(新潮文庫) (ISBN:4101214360)

これはハードカバーで出た時に読むんだった・・・!と後悔するぐらい素晴らしい本でした。以前読んだ「BRAIN VALLEY」と雰囲気が結構似ているのですが、あちらは、怒濤のクライマックスまでの道のりが長くて、ある意味お勉強的だったのに対して、こちらはもう最初からエンジン全開。途中で退屈する事がありませんでした。
「AIが人間のような知能を持ったら・・・?」というテーマの小説は、特に珍しくも新しくもないですが、これだけ分厚い学問的なバックグラウンドをベースに書かれた本はそうないでしょう。人間のような知能を持ったAIと、人間をそれぞれチューリング・テストに参加させ、どちらが本当に人間らしいか、どちらが人間らしくないかを比較するシーンは刺激的です。
人間の知能を超えようとする試みが、この本の中でも所々紹介されますが、個人的には最後の局面で「フレーム問題」の解決策として紹介される手段がツボでした。なるほどこれなら、人間を超えられるかもしれない。フィクションと言ってしまえばそれまでですが、単なる夢物語でも無い所が素晴らしいです。
これで、タイトルがもうちょっとキャッチーだったらよかったんですけどね。全部読んでからこのタイトルを見ると、なるほど確かに正しいタイトルだと思うんですけど、このままのタイトルだと「趣味:難しい本を読む事」とか言ってそうな人の手にしか届かないんじゃないかと。もうちょっとソフトなタイトルなら、ハードカバーのうちに買っていたのに。。。