夢を与える(ISBN:9784309018041)

ひさしぶりに小説を一冊読んでみたのでメモ書き。しばらく積ん読状態にしていた綿谷りさの第三作を読みました。
アイドルの波瀾万丈の生き様をテーマにした、苦い物語です。特にストーリーが予想外という事は無いんですが、静かに、淡々と状況が悪化していく様子は、なかなか怖いものがありました。
内容としては、たぶん、私小説に近い物なのでしょう。ふとしたことで、芥川賞受賞によりアイドル作家となってしまった綿谷りさが、自分の周りにいる人間をどう捉え、自分に課せられた使命にどう向き合ってきたか、そしてこれからどうやって作家活動をしていこうと思うのか、といった諸々を、ストーリーを破綻させないようにちりばめた物なんだろうと思います。
そういう意味では、次に出る作品は、今よりは完成度が高く、その一方で、ここまで苦しみに満ちた小説にはならないのではないかと思います。今後どんな道に進もうと考えるのか、が描かれているであろう次回作には、期待せざるを得ませんね。