NHKの危険な賭け

http://www3.nhk.or.jp/pr/keiei/otherpress/070515.html
NHKが、受信者との関係に民事裁判という形で明確な線を引く事を決めた。
受信者が、払ったり払わなかったり、というなあなあのスタンスでいる事を、絶対に許さないと決めたのだ。
すごい自信だ。もしかすると、訴訟に持ち込んでも勝算は十分、という確固たるシナリオがあるのかもしれない。
でも今回のアプローチがNHKにとって正しい戦略なのか?というと、それはそれで疑問も残る。

なぜなら、受信者以上になあなあでやってきたのが、他ならぬNHKだから。

例えば収入の話。受信者からお金を年15000円も取って番組を放送しておいて、なおかつ番組のDVD BOXを3万円で売る。それでは番組を作る予算が足りないかというとそんなことはなく、NHK職員の年収は平均1000万円を超える高水準だ。正当性があるとはいえない。

また、2011年に控えるアナログ停波に対して、「年に15000円も払っているのに、2011年には放送が見られなくなる。NHKとして責任を取ってほしい」と言われたらどうするか。「テレビを持つなら契約」というスタンスでいるならば、当然、他のサービスと同じように、それまでの受信者に対して、移行パスを提供する、具体的には、無料(少なくとも格安)でチューナーを配る位の事をしなくては話が通らなくなる。

これまでは、払いたくなければ払わないでも問題無い、という程度の存在でしかなかったNHKだから、見逃してもらえた数々の問題点に、真正面から向かい合わなくてはならなくなってくるはずだ。もしこれからも、なあなあのスタンスでいるならば、民事訴訟を起こしてまでお金を取り立てた受信者から、今度は逆に民事訴訟を起こされかねない。

国(総務省)に頼らずに受信料の納付を義務付けるというNHKの方針は、少し強欲過ぎたような気がしてならない。今回の法廷闘争をはじめてしまえば、その刃がNHK自身をも切り刻む可能性が高いからだ。少なくとも、今までより格段に厳しい目で監視されるようになる。ましてや、受信料取り立ての民事裁判に負けてしまえば、今度は受信料収入が激減してしまう可能性だってある。それだけのリスクを取ってまで、受信料回収を急ぐ必然性は、正直言って見えなかった(地デジ時代まで待って、スクランブルかければいいわけだし)。今からでも遅くないから、うやむやにして、無かったことにするほうがいいと思うんだけどな。