セックスボランティア(ISBN:4104690015)

日ごろ表に出てこない「障害者の性」について、真正面から論じた本。
言われてみて初めて気づくような種類のことだが、障害者にも性欲はあり、恋愛したいと思う。だが、障害者の多くにとって、その想いをかなえることは難しい。生物的としてのセックス遂行能力が低下するし、社会的に健常者と同等の扱いをうけることができなくなってしまうからだ。日常生活を遂行するだけでなく、恋愛の面でも、障害者は弱者に転落してしまうのだ。そんな弱者に対して、性的サービスを提供しよう、というボランティアがいる。それがこの本のテーマだ。
ところで、社会における弱者は、どこまで自分の「権利」や「わがまま」を主張できるのだろうか。健常者で、かつ「勝ち組」に属する人間は、お金や権力で、苦も無く自分の欲望を満たすことができる。それがどんなに我侭で自己中心的なものであっても。一方、障害者を代表とする弱者は、それが極めて限定された範囲でしか、許されない。どんなに努力をしても、「勝ち組」のように振舞うことはできないのに・・・。
でも、だからといって、社会的な努力をしない障害者に、「負け組」の人間以上のサービスが与えられていいのか、という事を考えると頭を抱えざるを得なくなってしまう。貧しかったり、魅力に乏しかったりで、異性に相手にしてもらえない人間の数は、決して少なくは無い。「障害者」というだけで、「負け組」以上の待遇を受けてよいものなのだろうか。
弱者はどこまでかばってもらう権利があるのだろうか。そして、どこまでわがままを通す権利があるのだろうか。そういうことを考える上で、ものすごくインパクトのある本だった。