チルドレン(ISBN:4062124424)

読み進むほどにはまってしまう、そんな短編集だった。
一見無関係に見える5つの短編が、実は有機的に繋がっているということが、読み進むうちに分かってくる。そして、最後に、軸となるストーリーが一本の糸で結ばれる。
各短編の軸になるのは、観察力抜群で、歌が上手な「陣内」という男。自分勝手で、勘を頼りに行動するものだから、周りの人にとっては扱いにくいことこの上ない。だけど、あてずっぽうにもみえるその行動が、事件を思わぬ方向に展開させていく。
広告で使われているような「奇跡」というほど大げさな展開は、あまりなかったように思うけど、意表を突かれるような展開の連続で、非常に楽しめた。
ミステリーを読んでいるような印象のあまりない、不思議な印象のミステリーだった。賞を取るようなインパクトのある作品とはちょっと違う気がしたけど、これはこれで好きだな。